昨日の東京高裁の判決について

こんにちは。


久しぶりのお昼の更新です。


気になる判決が今日の日経の朝刊に掲載されて
いましたので、久しぶりに法律のことです。


昨日9月25日、東京高裁にて、
土地の売買契約時には無害とされていた土中の
フッ素が12年後に有害として法規制されたため、
買主が売主に対して、そのフッ素の存在が
売買の目的物の隠れた瑕疵に該当するとして
いわゆる瑕疵担保責任に基づいて
フッ素の汚染除去費の支払いを求めた
裁判の判決言い渡しがあり、
売主側の責任を認めなかった第1審判決を
変更して売主に対して4億4800万円の
支払いを命じたそうです。


記事によれば
買主は売主から平成3年に土地を約23億円で購入、
それから12年後の平成15年に土壌汚染対策法が
高濃度のフッ素を有害物質として新たに規制したため、
買主が平成17年に調査したところ、
基準を超えるフッ素が土中に含まれていたことが
判明したために除去費用を請求したということです。


この売買から12年経過後に有害物質として
新たに指定された物質が土中に含まれることで
売主の責任を認めるというのが酷でないかということも
疑問なのですが、
それより気になるのは
瑕疵担保責任に基づく買主の損害賠償請求権が
そもそも時効消滅していたのではないかという点です。


最高裁の平成13年11月27日判決
民集55巻6号1311頁)は、
買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権も
民法167条1項により、
買主が売買の目的物の引渡しを受けたときから
10年で時効消滅するとしました。


記事には買主が土地の引渡しを受けた時期について
示されていませんでしたが、
売買が平成3年に行われていることからし
平成3年中に引渡しが行われていることは間違いないと
思います。

であれば、上記最高裁判例に従えば、
そもそも土壌汚染対策法が制定された
平成15年より前の平成13年には
買主の損害賠償請求権は時効消滅していたのでは
ないでしょうか?


時効を援用するかどうか
(時効の主張をしてその利益を受けるかどうか)は
当事者の自由に任されていますので、
売主が時効を援用しなかったということなのでしょうか?


それとも、たまにありますが、
時効の援用が信義則に反するから許されなかった
(裁判所がそう言っていればおそらく記事には掲載
されるでしょうけど。)ということでしょうか?


おそらく売主側から上告されて
最高裁で争われることになると思いますが、
最高裁でいきなり時効を援用するということは
できるのでしょうか。
帰趨を楽しみに見守りたいと思います。