弁護士増員問題について

弁護士増員問題について議論があるようです。
先日、日弁連の会長選挙が行われましたが、
その候補者2名のどちらもが、増員見直しを公約に
挙げていました。


このような弁護士会の論調、状況については、
新聞などでは国民不在の議論で、本来必要な競争を
回避しようとしているなどと批判されています。


この点については、
新聞などの批判にごもっともな点もありますが、
やはり弁護士も1「職業」である以上、
それに就いた方が生活できる状況がなければ
(当然、相応の努力が前提です。)
成り立たないという点をご理解いただきたいと思います。


既に弁護士登録をして20〜30年経って、
十分な経済的基盤ができている弁護士が、
今後の競争激化を嫌って増員に反対している
というのであれば批判されて然るべきと思います。
しかし、最も危惧されるのは、これから弁護士になろうとして
法科大学院に在学している、または法科大学院への進学を
希望している方々が弁護士になった際に就職口がない、
生活できないという苦境に陥ってしまうことです。
現に既に修習生の数が増えている一方、就職口は増えていないため、
いきなり独立するしかない弁護士も相当数いるようです
(たしかに、それでうまくやる方も「少数」おられます。)。
企業内弁護士がもっと増えるのではないかという楽観的な見通しも
あったようですが、現実にはそのようになっていません。
諸外国の弁護士の数も参考にはすべきですが、
法曹ないし裁判や法的手続に対する関与の仕方の違い、
ひいては国民性の違いを無視、軽視して、
ほとんど同一視してしまったことに基づく
失敗であったと考えられます。


上記のように既存の事務所に就職できなかった弁護士は、
そもそも競争する前のスタートラインに
立つこともできなくなってしまいます。
そうなると、弁護士という職業の魅力も減りますから、
優秀な人材が法曹界に入ってくることも少なくなってしまう
ことになりかねないと思います。


この弁護士増員問題については、
弁護士、及び弁護士になろうとしている方の
現実の状況(既設の弁護士事務所自体に増員された
弁護士を受け入れるだけの容量がない、他方、
弁護士は登録したからといってすぐに自分の仕事だけで
経済的な基盤を作ることができるわけではない。
したがって、就職口がないまま弁護士を増やせば、
仕事ができず、収入も少ない新人弁護士があふれることになる。)を
国民の皆さんにご理解頂いた上で、
漸増に修正していくほかないと考えています。