敷引特約について

こんばんは。


今日,最高裁消費者契約法が適用される賃貸借契約における
いわゆる敷引特約の有効性について
「原則有効,不当に高額過ぎる場合は例外的に無効」という
判断基準を示した判決を言い渡したそうです。


実は,私,昨年から福岡簡裁にて家主側に立って,
敷引特約の有効性を争う裁判を担当していまして,
「敷引無効,よって敗訴」という判決の言渡しを
受けていたのに対して先日控訴したところでした。
今回の最高裁判決は大変な力添えになります。
「よっしゃーーー!」って気持ちです。


ネット上では,この最高裁判決について賛否両論が見受けられますが,
この「原則有効,不当に高額過ぎる場合は無効」というのは,
数年前に「敷引が無効になった!」とセンセーショナルに
マスコミが報道した大阪高裁判決も示していた判断基準です
(その判決では「暴利行為でない限り有効」としていました。)。
その判決では判断基準においては「原則有効」としたものの,
当該事案で問題となった敷引特約のうち1つは有効,
1つは無効と判断したため,
マスコミが「敷引が無効になった!」と大騒ぎし,
弁護士や裁判官はその結論だけ聞いて,
「敷引きは無効」と思い込んで
その後の裁判実務を行ってきたというのが実情だと思います。
司法試験の受験の時に,
「結論だけ覚えてはいかん。その背景,趣旨に遡って
理解する必要がある。」と言われたのを皆忘れてしまっていたようです。


私が担当した裁判の相手方の弁護士や簡裁判事も,
「敷引=無効」との固定観念から脱却できませんでした。
消費者契約法の条文や解説書を読めば,
契約の条項が無効になるか否かは,
契約締結時までの全ての事情を考慮して決しなければならないとうことが,
簡単にわかるだろうに,敷引だからダメの一点張りでした。


担当した簡裁判事は,
賃借人がどんなにお金を稼いでいる人でも,
仕事場に歩いて1分のところの夜景がきれいなマンションを
気に入って賃借人の側から「是非借りたい。」と申し込んできても,
契約前に敷引の内容について明確に説明を受けていても,
敷金0の物件が契約当時,他にたくさんあっても,
しかもその賃借人は法人の理事長を務めており,
その法人名義の賃貸借契約では敷引特約が有効になっても,
賃借人がポルシェに乗っていても,
ポルシェは法人の経費になるから法人名義で購入し,
他方,マンションの家賃は法人の経費にすることができないので,
その賃貸借契約は個人で行った場合でも
賃貸借契約は消費者契約に該当し,
「敷引は不当だから,無効」と判断されました。
裁判官が個別の事情を考慮しないで判断を下すというのは,
裁判官の職務放棄と言ってよいのではないか,と訴えましたが,
担当の簡裁判事や相手方の弁護士には通じませんでした。


今日の最高裁判例があっても,
控訴審で当方が必ず勝訴する,という訳ではありませんが,
少なくとも簡裁が判断したように,
「敷引=無効」というような極めて形式的な判断がされることは
なくなったと思いますので,非常に心強いです。
控訴審でも臆せず主張・立証していこうと思います。